遺言書の種類と作成の流れ
民法上、遺産相続の相続人と遺産の相続分が定められています(法定相続といいます)。しかしながら、一方で、遺言書を作成することにより被相続人の意向を反映したり、相続人の間での紛争の発生を回避することができるわけです。そこで、民法は遺言書がない場合の相続方法を明記している一方で、遺言書に基づく相続も認めています。ただし、遺言書が有効であるとしても被相続人の子や配偶者などに認められた、「遺産最低限の取り分」である遺留分は侵害されないことになってます(民法1042条参照)。このような制約のもとで遺言書に基づく相続がなされます。
普通の方式としての遺言書の種類は一般的に3種類あります。
第1に、自筆証書遺言があります。これは、遺言者により遺言書の全文・日付・氏名が自筆され、これに印が押されている遺言書になります(民法968条1項)。ただ、財産目録は令和元年の改正により自筆でなくても良いですが、全てを記入する必要があります(同条2項)。
縦書き・横書きなどの指定はありませんが相続財産を正確に記入する、などの遺産情報に関する書き方は厳格です。
遺言情報を正確に記入していない場合は無効となってしまいます(同法960条参照)。
第2に、公正証書遺言があります。これは、公正証書である遺言書になります。つまり、承認2人以上の立ち会いのもと、公証人により遺言者の口述が筆記されて作成されます(民法969条)。障害などの事情で口が聞けない人に対しても特則があります(同法969条の2参照)。
公証人立ち会いのもとで遺言書が公正証書として作成されるわけですから、無効になることはほとんど考えられません。
後述する遺言書の検認についても、公正証書遺言は検認を経なくても良いことになっています(同法1004条2項)。
公正証書に関しては、財産額に応じて公証人の手数料費用が発生します。大体の相場は15万円です。
公正証書遺言の必要書類は、遺言書の内容を記したメモ、遺言者の身分証明書、遺言者と相続人の族柄がわかる戸籍謄本、遺言者の財産リストです。
第3に、秘密証書遺言があります。これは、公証人と証人の前で自己の遺言書であることを宣言して、秘密証書として保管される遺言書になります(民法970条1項)。公正証書遺言と異なり、公証人・証人に遺言書の内容が知られないことが特徴になります。
以上の手続きに沿って作成された遺言書を、遺言者は、1人以上の人を遺言執行書として指定することができます(民法1006条1項)。
遺言執行者として就職することを承諾した者は直ちにその職務を行う必要があります(同法1007条1項)。具体的な遺言執行者の職務・義務としては、遅滞なく財産目録を作成し、これを相続人に交付すること(同法1011条1項)、遺言内容を実現するために必要な一切の義務を負担すること(同法1012条1項)が挙げられます。
普通の方式の遺言書の中で、公正証書遺言を除いて、被相続人が死亡した後に遺言書を開封する場合には、家庭裁判所に対して、遺言書の検認請求をしなければなりません(民法1004条1項)。検認を怠ったからといって遺言書の効力がなくなることはないですが、5万円以下の過料を取られます(同法1005条)。
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- 第一東京弁護士会 司法研究委員会 電子商取引研究班
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- 元公益財団法人交通事故相談センター相談員
- 中小企業認定支援機関(中小企業経営力強化支援法における経営革新等支援機関)
経歴
- 1994.03 青山学院大学法学部卒業
- 2002.10 弁護士登録(第一東京弁護士会)
- 2002.10〜2004.05 津山法律事務所
- 2004.09〜2006.01 弁護士法人渋谷シビック法律事務所
- 2006.02〜2021.08 虎ノ門協同法律事務所
- 2021.08 パークス法律事務所設立
著書・論文
- 「ネットオークションに関する法的問題」共著:第一東京弁護士会司法研究委員会電子商取引研究班
- 家族に関する法律相談(49) 戸籍時報2014年7月号「婚姻費用における住宅ローン支払い分の控除について」
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